サブゼロ処理について
焼き入れ焼き戻し後にマイナス80℃以下に冷却することを、サブゼロ処理と言います。
この処理をすることにより経年変化を防止することができ、高精度を要求されるゲージ類には広く採用されています。
アイゼンのピンゲージは、この方法を採用し、寸法の経年変化防止につとめています。(経年変化……長い年月により寸法が変化すること)
ピンゲージに採用されている特殊鋼は、一般に800℃以上に加熱し、オーステナイト組織とした後、水または油中に入れて急冷させ、マルテンサイト組織とします。
これにより、硬度はHV800(ビッカーズ硬度800)または、HRC64(ロックウェル硬度Cスケール)以上に向上します。
この急冷によりマルテンサイト化されるわけですが、100%変態させることは不可能であり、10~20%はオーステナイトのままで残り、これを残留オーステナイトと呼んでいます。
この残留オーステナイトは、常温に放置しておきますと、次第に分解してマルテンサイトに変態してゆきますが、この時容積も膨張するため、ピンゲージの生命である直径が次第に大きくなります。
この現象を経年変化と呼んでいます。
この、経年変化を防止するため、寸法の安定処理を施す必要があります。
この処理の方法の一つとして一般のゲージについては、150℃~200℃の条件で24時間以上加熱する焼き戻し法が採用されています。
しかし、ブロックゲージや高精度を要求されるゲージ類には、この焼き戻し法に加えて、-80℃以下に冷却するサブゼロ法が併用され、この両処理法を交互に繰り返すことにより、人工的に残留オーステナイトをマルテンサイト化させる効果的な寸法の安定処理法が採用されています。